「太陽の子」劇伴音楽

日本映画

終戦記念日の8月15日NHKでオンエアされたドラマ『太陽の子』(作演出:黒崎博)は戦時中、原子爆弾の開発を研究する京都大学の若き研究者の苦悩、戦争に翻弄される人達を描いた話。

ミューリーはケイト・ウィンスレット主演の『愛を読むひと』で素晴らしい音楽を書いてる現代音楽シーン注目のコンポーザー。
『太陽の子』では劇中に19の音楽を作曲、ほとんどが短い曲だがどれも凄く丁寧でレベル高いサウンドを構築している。

映画音楽ドラマ音楽というと一般の方々には結局は親しみやすいメロディ、情緒的でキャッチーなテーマメロ、っていうことになるが、そしてそれを否定はしないが音楽の楽しみ方としては残念ながら非常に狭い。
やっぱ売れ線のメロディなのね、っていうのが音楽の価値観を画一的にしてしまうのがつまらない。

メロディ、メロディだけじゃない楽しさ、ちょっと知的な音の秘密、みたいなところにも興味示していただくと広がるが、確かに一度観ただけでそこまで気にしてもらうのは難しい。

ニコ・ミューリーの音楽はその知的な音の表現を完璧に表現、つまりキャッチーで情緒的なメロディとか一切ないサウンドになっていて、でいて昔の世代の現代音楽の無調の観念的な感じ、アタマで考えただけのリアリティなき音楽でもない柔らかさがある。

これは新しい世代のコンポーザーであり、クラシカルでも昔のクラシックの下品なベタで臭い付け方もなく、音楽による知的な価値観を柔らかく新たに表現できる人かもしれない。
エンタメ的というよりアートな方向・・・でもエンタメっていつもその前に超マイナーだったりアヴァンギャルド、アートだったりしたものがエンタメに取り込まれるし、王道とかクラシックだけではエンタメは足りないので、多分ですが・・・それがひとつの進化かもしれない。

内容はシーンのセリフの中からいつのまにか音楽入ってくるタイプが多い。
オーソドックスなセリフ受けの音楽スタートでは、國村隼扮する科学者のセリフ「世界を変えたい」を受けての音楽。柳楽優弥扮する若き研究者のセリフ「いっぱい未来の話しよう」を受けての音楽。

「次に(原爆)落とされるのは京都という噂があるんや」の辺りからの音楽などがあった。また「硝酸ウランや」後のチェレスタでの神秘的なムードはとても好き。楽器は大編成ではなくピアノ、バイオリン、チェロ、グロッケン、チェレスタ、パーカッション、シンセ、等と思われる。(多少違うかも、すみません)

國村隼のセリフに「この戦争に大義があるとは思えない」は重い言葉。

また主人公シュウ(柳楽優弥)の弟役を少し前に自ら命を断った三浦春馬が演じ、劇中で海に入っていくシーンがあり、その後出征し死んでしまうので、ショッキングではある。

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